1996年 秀吉

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視覚的にも聴覚的にも、秀吉が百姓からのし上がっていったことを強く印象づけていたように思う。視覚的には、主人公・秀吉役の竹中直人さんがしょっちゅうツバを飛ばし、涙や鼻水やよだれを流し、泥まみれになっての熱演をしていたこと。あまり美しい絵面ではなかったが、勢いと行動力を感じさせられる人物造形だった。特に「心配御無用!」が決め台詞で、腰を落とした姿勢で右手の平を前に突き出し、ツバを飛ばしながら発するのがお決まりだった。オリンピック中継によって休止される予告では、同じ姿勢で「がんばれニッポン!」と言っていたことも合わせて覚えている。聴覚的には尾張弁が印象深い。私がテレビで尾張弁を聞いたのはこの作品が初めてだったのではないかと思う。特に、秀吉の母・なかを演じた市原悦子さんの訛りが強くて、非常に味があった。訛が強い=百姓というのは偏見だが、イメージづくりに大きな役割を果たしていたと思う。

石田三成の幼少期を演じた小栗旬さんが2009年の『天地人』で大人になった石田三成を演じた際、少年時代の三杯の茶のエピソードでこの作品の映像がモノクロ化されて使用されていたのは有名な話。他にも2014年の『軍師官兵衛』で竹中直人さんが再度秀吉役で出演し、『秀吉』では演じられなかった晩年の秀吉を演じていたり、滝川一益役の段田安則さんが2016年の『真田丸』でも同役で出演していたりなど、後年の大河ドラマとのつながりの多い作品である。

この作品には、画として印象的なシーンがいくつかあった。 例えば、秀吉の側室であり後にその子を産む茶々。どういう話の流れかは忘れたが、松たか子さん演じる茶々がワインレッドのドレスに身を包んでいた姿を覚えている。子ども心に、その妖艶さにドキッとし、何かいけないものを見ているような気持ちになった。大河ドラマで何度も描かれている人物だが、いまだに茶々といえば松たか子さんを真っ先に思い出す。 また、明智光秀が山崎の戦いで敗れた後、その首を抱えて妻のひろ子が琵琶湖に入水する後ろ姿。秀吉のライバル的存在として、本作品の準主役のような扱いであった明智光秀とその家族の最期を丁寧に描く、哀しく美しいシーンであった。

渡哲也さんが演じた織田信長は厳しく残虐でもあったがそれ以上に格好よく、秀吉にとってはこれ以上ない理解者であり、正に「御館様!」、ついていきたくなる上司という感じであった。(余談だが、当時小5だった私は当然のように「親方様」と漢字変換して聞いていた。)だからこそ、明智光秀とのすれ違いが哀しくもどかしく感じられた。一方で、信長が側室の吉乃に対して優しく振る舞い、子どもと接する、人間らしい姿も描かれていた。ちなみに本作には、信長の正室であるはずの濃姫は登場しない。おかげで、信長の妻と言えば長男・信忠の母である吉乃というイメージをしばらく持ってしまった。

本作随一のオリジナルポイントといえば、石川五右衛門が秀吉の幼なじみとして登場したことだろう。次第に対立し、最後は秀吉によって釜茹でにされていたが、石川五右衛門の存在自体が伝説的であるし、ほとんどオリジナルキャラクターのような存在である。赤井英和さんが演じていたこともあって、アクの強い人物であった。大河ドラマでオリジナルキャラクターがつくられることはよくあるが、特に、主人公の幼なじみとして登場することが多いように思う。例えば『新選組!』の中村獅童さんの滝本捨助、『真田丸』で長澤まさみさんが演じたきり、『義経』の上戸彩さんのうつぼなどが思い浮かぶ。主人公の近くに自由に動かせるオリジナルキャラクターを配することで物語を動かしやすくしたり、主人公が直接関係していない歴史上の事件に絡ませてストーリーテラー的な役割を持たせたりなど、物語を通して重要な役割を担っていることが多い。