2016年 真田丸

Amazon 『真田丸 完結編 (NHK大河ドラマ・ストーリー)』
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物語の主人公は有名な真田幸村。しかし、実際の諱は「信繁」であり、本人が「幸村」と名乗った史料は残っていないらしい。この作品では、大阪の陣に出陣するにあたって改名したという設定を採っている。ただ、作中で最も使われるのは、「幸村」でも「信繁」でもなく「源次郎」という通称、もしくは「左衛門佐(さえもんのすけ)」という官位であった。視聴者の中にはややこしいと感じる人もいたかもしれないが、リアルだし、脚本を書いた三谷幸喜氏のこだわりを感じさせられた。

最初に、真田幸村を堺雅人さんが演じると聞いたときは、イメージとあまりにもかけ離れていると思った。真田幸村というと、大坂の陣で家康に死を覚悟させたほどの武将。また、昨今のゲーム等でも人気があると聞く。カッコよくてカリスマ性があり勇猛でヒロイックなイメージであったので、柔和な印象の強い堺さんとはどうも合わないように思っていた。しかしこの作品では、自ら困難を切り開いて突き進んでいくというよりは、状況や周囲の濃いキャラクターたちについていったり付き合わされたりしているうちにいつの間にか知らないところにたどり着いていた、というような人物として描かれていると思う。脚本の三谷幸喜氏は当書きをすることで有名なので、堺さんのキャラクターに合わせて書いた部分もあるのかもしれない。

全50話のうち、最終話を除くすべての回に、二字熟語のサブタイトルがつけられていた。最終話は、脚本上では「疾風」というサブタイトルが付けられていたらしいが、放送では無題であった。ちなみに、年末に放送された全4回の総集編には、それぞれ「波瀾万丈」「表裏比興」「栄枯盛衰」「日本一兵」という四文字熟語のサブタイトルが付けられ、最初から最後まで一貫して形が美しく、三谷氏の緻密な性格を表している。

また、さすが群像劇に定評がある三谷氏の作品だけあって、脇役にも魅力的な登場人物が多かった。「真田丸」というタイトルは、大坂の陣の出城の名前というだけでなく、戦国の荒波を家族一丸となって乗り越えようとする真田家を小さな船に例えたダブルミーニングであるそうだ。そんな意図もあってか家族のシーンが多いし、真田家には特に個性的なメンバーが揃っている。草刈正雄さん演じる父・昌幸は頭が切れすぎて言行がよくわからないし、草笛光子さん演じる祖母・とりは信繁の兄・信幸の声だけ聞こえないし、松岡茉優さん演じる信繁の正室・春は嫌なことがあると障子を指で穴だらけにするし。『篤姫』で堺さん演じる徳川家定の母を演じた高畑淳子さんが、こちらでも信繁の母・薫を、同じくユニークなキャラクターで演じていたのもおもしろかった。

そんな真田家の中でも良識派であり、信繁と正反対で慎重な性格の兄・信幸(信之)を、おちゃらけたイメージのある大泉洋さんが演じていたのが意外と似合っていた。大泉さんの演技力ももちろん素晴らしいのだと思うが、信幸をただ真面目な人物ではなく、真面目が故に周囲に振り回されがちな人物として描かれていたために、大泉さん自身とより親和性が高くなっていたのではないかと思う。

また、真田幸村自身が敗者であったためか、作品全体として敗者にスポットが当てられることが多かったように思う。例えば武田勝頼。序盤で織田家に責められ命を落とすが、平岳大さんの真に迫る演技が印象的であった。あるいは豊臣秀次。新納慎也さん演じる憎めないキャラクターが素敵だった。秀吉によって妻子や侍女も連座で処刑された人物であり、その理由には様々な説があるが、この作品では誤解やすれ違いが重なった結果と描かれている。長澤まさみさん演じるきりとの、ほのかすぎる恋模様も切ないものだった。

そして、山本耕史さん演じる石田三成である。最初は信繁に対し冷淡だが、親しくなっていくにつれて不器用な面が見え、憎めない三成であった。山本耕史さんは、2004年の大河『新選組!』で土方歳三を演じていた。堺雅人さんも山南敬助を演じており、今作で2人の副長の再共演が成ったことに少なからず興奮した。