2008年 篤姫

Amazon 『篤姫 後編 (NHK大河ドラマ・ストーリー)』
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実は、『新選組!』をきっかけに堺雅人さんのファンになった私。終了後は今で言うところの「新選組!ロス」のような状態に陥り、2005年以降の大河ドラマはほとんど見ていなかったのだが、この『篤姫』は堺雅人さんが出演すると聞いて、観ることを決めた。堺雅人さんが演じたのは徳川十三代将軍・家定であり、言わずと知れた篤姫の夫である。徳川家定というと、暗愚のイメージがあるかもしれない。病弱であったのは史実だが、特に有名なのは、ハリスとの会見の際に頭を後ろに反らし足を踏み鳴らしたという、奇行とも言える行動ではないだろうか。これはハリス自身の日記に記されているものであるが、こういった行動を根拠に、家定は脳性麻痺であったとする説もある。ただこの作品では、何度も毒を盛られたことによる人間不信と絶望から、暗愚のフリをしているという設定であった。家定の父である徳川家慶には男女合わせて27人の子どもがあったにもかかわらず、成人したのは家定だけ、という史実からも、真実味のある設定である。そんな家定だが、まっすぐに向き合おうとする篤姫にだんだんと心を溶かされ、幕政について意見を交わし合うようになるだけでなく、互いに思い合って短くも幸せな夫婦生活を送る。庭で転びそうになった篤姫を家定が抱きかかえるシーンには、時代劇らしからぬときめきを感じた。

家定は早世したため結婚生活は2年足らずで、どうしても登場回数が少なくなってしまう夫君に代わり、主人公の相手役として描かれていたのが、瑛太さんが演じた小松帯刀である。幼なじみであり、小松帯刀が一方的に篤姫を想っているという設定であった。幕末の薩摩を描いた作品でも小松帯刀にスポットライトが当たったものは、他には正直記憶にないが、若くして薩摩藩の重職に取り立てられ、大久保利通の上司であった時期もある人物である。そんな瑛太さんは、おなじく鹿児島を舞台にした大河ドラマ『西郷どん』では件の大久保利通を演じ、こちらでも準主役というべき扱いであった。瑛太さんの父親が鹿児島出身だそうなので、そういった縁もあって抜擢されたのかもしれない。ちなみに小松帯刀の師匠であり義兄である小松清猷を演じた沢村一樹さんは『西郷どん』では西郷の師匠である赤山靭負を演じている。こちらはご本人が鹿児島出身である。

篤姫、というか天璋院というと、大奥での確執を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。まず、家定の母である本寿院。篤姫は、家定の後継として一橋慶喜(後の徳川慶喜)を推すために将軍家に輿入れしたが、大奥は慶喜の父である水戸の徳川斉昭を嫌う風潮が強く、中でも本寿院はその中心であった。本寿院は南紀派の勝利の後も篤姫を何かと批判したようだが、本作品の本寿院、高畑淳子さんは少しユーモラスでどことなく憎めないキャラクターとして演じられていた。また、徳川家茂の正室であり皇室から降嫁した和宮との不和も有名である。堀北真希さんが和宮を演じており、当初は仏頂面が多かったが、松田翔太さん演じる家茂との交流を通して様々な表情を見せるようになるのが微笑ましかった。もう一人、家定の側室である志賀も取り上げたい。鶴田真由さんが演じた美人で、家定の唯一の側室だが、家定のお成りを待って鶴を折り続け部屋中が鶴だらけになっていたり、摘んだ花を食べたり、うつけを演じる家定と一緒になって鳥を追いかけたりと、なんとなく不気味で得体の知れない人物であった。

この作品で井伊直弼を演じているのが、大河ドラマの常連、中村梅雀さんである。井伊直弼というと、安政の大獄、そして桜田門外の変があまりにも有名で、権勢を恣にしたイメージがあるかもしれないが、この作品では強い信念を持ち、私欲を捨てて幕府や国のために働く人物として描かれている。実際、井伊直弼は地元では名君と名高い人物であったらしい。小学校6年生ではじめて歴史を習ったとき、定期的に壁新聞を作る授業があったのだが、同級生が黒船来航や坂本龍馬などをテーマにする中で、私はなぜか桜田門外の変を取り上げたことを強く記憶している。