1997年 毛利元就

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この大河は、私が小5のときの1月から放送が始まった。謀将のイメージが強い元就であるが、当時の私にとっては名前すら聞いたことがない人物だったので、先入観なく観ることができた。この元就は、遺された書状や文章を元に人物造形されたようで、謀将というよりは愚痴っぽくボヤいてばかりいる普通の夫、普通の父という像であったと思う。それでも、V6の森田剛さんが演じた少年時代は両親を早くに亡くしたり家臣に城を追い出されたりしたこともあって不良っぽくギラギラとしていたのに、三代目中村橋之助(八代目中村芝翫)さんへのシフトと時を同じくして、別人になったようにぐちぐちくどくどとカッコよくない大人になってしまった。『八代将軍吉宗』ほどの衝撃ではなかったが、少なからずガッカリした。

安芸の国人に過ぎなかった毛利氏が、大内氏と尼子氏の間で翻弄されながら、徐々に力を得て中国地方の雄に成り上がっていく物語だが、そちらを縦軸とすると、横軸として毛利家のホームドラマという面があったと思う。大河のホームドラマ化を嘆く声も聞かれるが、少なくとも毛利元就の場合、三本の矢の逸話の元となった「三子教訓状」など、家族を思う書状が遺されていることもあり、ホームドラマという側面を持たせる必然性を感じる。幼くして両親を亡くし、跡を継いだ兄もその子も早世し、異母弟には謀反を起こされ、家族に縁遠い前半生であったという史実も、家族思いという設定を裏付けている。

また、登場する女性たちの強さも印象的だ。元就を「勝ったようなものでございます」「しおしおなさいますな」と励ます正室・美伊の方を演じた富田靖子さん、いつまでも若々しい養母・杉の方の松坂慶子さん、三本の矢に加わろうとする娘・可愛(えの)の高橋由美子さんをはじめ、息子の妻たちや晩年の元就を支える側室たちなど、強い女性が多く登場する。

家族といえば、元就の兄・興元を演じていたのが渡部篤郎さんだったことを、このサイトをつくるにあたって初めて知った。悩んで酒に頼り体を壊して早く死んでしまう姿が非常に印象的で、妻の雪役の一路真輝さんも凛として儚く、哀しい2人であった。渡部篤郎さん出演の大河ドラマと言えば、2001年の北条時宗が印象深いが、どちらも、主人公の不遇の兄役なのが切ない。不遇の兄顔なのだろうか。

元就の三男・小早川隆景は恵俊彰さんが演じている。芸人さんが大河ドラマに出て、しかもかなりの主要キャラを演じるということに驚いたが、この智将はなかなかカッコよかった。特に厳島の戦いで、荒天のなか敵を欺いて上陸したのはシビれた。松重豊さんが演じた次兄・吉川元春とはそりが合わず、ことあるごとにぶつかっていたが、実は兄思いで、「元春兄ぃ」と呼ぶのがなんか好きだった。

また、『八代将軍吉宗』で徳川家重を演じた中村梅雀さんが、毛利の重臣の一人である志道広良を演じている。この人物は頭が良く、元就の軍師ともいうべき存在で、徳川家重とのあまりの違いに最初は違和感があった。しかしそれも含めて、中村梅雀さんの凄さというか、幅広さを感じさせられた。

前述の通り、毛利氏にとって大きな存在として大内氏と尼子氏が立ちはだかるが、特に尼子経久は巨大な存在として描かれ、演じる緒形拳さんは渋くてカッコよくて恐ろしい存在だった。しかしながら妻の萩の方には弱く、その姪であり元就の妻である美伊の方に対しても優しい一面を見せる、魅力的な人物であった。そんな尼子氏の居城であった月山富田(がっさんとだ)城は、城の名前としては私が知っている中で一番かっこいいと今でも思っている。そして、そんな月山富田城に、今夏行くことができた。

看板には、単に「富田城跡」とあった
石垣など、いくつかの遺構が残っている
山頂からの景色。月山は標高が決して高くはないが、勾配が急な険しい山で、在りし日の守りの固さを実感した