2011年 江〜姫たちの戦国〜

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浅井三姉妹は、戦国時代の中で最も有名な姉妹と言っても過言ではないだろう。北近江の戦国大名・浅井長政と、嫁した織田信長の妹・お市との間に生まれた三姉妹である。浅井長政には他に男子が2人いたとされているが、生母が誰だったかは分かっていない。小谷城の戦いで長政が自刃した後、長男の万福丸は殺され、次男は出家したとされている。『秀吉』の万福丸処刑のシーンをよく覚えている。串刺しの刑に処されたと伝わっているが、劇中ではまるでキリシタンの磔のように槍で脇を突かれていたと記憶している。また、三姉妹の他に2人ほど姉妹がいたという説もあるが、確かなことは分かっていないようである。長々と書いたが、この作品では長政とお市の間に三姉妹以外のきょうだいは登場しない。意図は定かではないが、三姉妹の中でも江は生まれてすぐに落城の憂き目に遭っており、兄たちの存在を認識することはその人生の中でほとんどなかったと考えられるので、最初からいなかったものとして扱ったのかもしれない。また、別の理由も考えられる。この作品は大河にしては言葉遣いなどが比較的現代的であり、主演が上野樹里さんということで当時25歳の若い女優さんであったことからも、視聴者として若年層も想定していたと考えられる。しかし、三姉妹以外のきょうだいを登場させようとすると側室の存在を肯定せざるを得ないため、現代の貞操観念にそぐわないので避けられたのかもしれない。いずれにしても長男の万福丸は浅井家的には跡継ぎであるし主要人物なので、登場させてもよかったのではないかとは思う。

江の長男である家光は後に春日局となる乳母によって育てられ、次男の忠長は自ら養育したと言われている。そういった原因もあり、江は家光とは不和で、忠長を跡継ぎにしようと画策したことは有名。史実では、家光と忠長の溝は埋まらず、最終的に忠長は自刃に追い込まれてしまうのだが、本作品では江は家光と和解する。忠長の自刃は江の死後であるので、江の一代記であるこの作品中ではそこまで描く必要はないとは思うが、実際に和解したかどうかは怪しいものだと思う。また、秀忠の隠し子である保科正之もこの作品に登場するのだが、史実では家光や忠長よりも年下であるのに、この作品では江と秀忠が心を通わせるより前に生まれた設定である。このあたりも、現代人の感覚に照らし合わせて変更されたのだろうか。

主役の江は前述の通り上野樹里さん、長姉の茶々を宮沢りえさん、次姉の初を水川あさみさんが演じたが、一般的なイメージと一番違ったのは初ではないだろうか。水川あさみさんがどうということではないのだが、食に執着し、江とよく喧嘩をする気の強い姉として描かれていて、大坂の陣で姉と妹の板挟みになり間を取り持つというイメージとは少し違っていた。

江は徳川幕府の二代将軍・秀忠の正室として有名だが、これが3回目の結婚であることはあまり知られていないと思う。豊臣秀吉に離縁させられた最初の夫・佐治一成は平岳大さんが、病死した2番目の夫・豊臣秀勝はEXILEのAKIRAさんが演じた。AKIRAさんの演技はこの作品で初めて見たが、個人的には好演だったのではないかと思う。顔つきも声も時代劇っぽくなく、他の大河作品であれば違和感があったかもしれないが、前述の通り本作は現代劇のような作品であったことも手伝ってか、飾らない笑顔と白い歯が印象的な、爽やかな秀勝であった。

秀勝の印象が良かったのは、AKIRAさんの力でもあるが、制作側の意図も強くあったのではないかと思う。秀勝をカッコよく描くことで、3番目の夫・徳川秀忠のうだつの上がらなさを強調しようという意図だったのではないかと思うのだ。向井理さん演じる秀忠は無気力な皮肉屋で、闊達な印象の秀勝とは正反対のような人物造形であった。お互いに第一印象が最悪であった江と秀忠が距離を縮め、秀忠は将軍となって、晩年には大名たちに厳しい態度を見せるまでに成長していく姿を、視聴者としてはちょっと親のような気持ちで観ていた。