2000年 葵 徳川三代

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徳川家康、秀忠、家光の三代を描いた作品だが、3人を描いたというよりは、幕府草創期の徳川家を、その周辺人物も含めて描いていると言う方が正しいように思う。Wikipediaの登場人物の部分を見ていただければ分かるが、とにかく人が多い。そんな中で、勝手にあえて主人公として一人を挙げるならば秀忠かなという印象がある。ドラマの初回が関ヶ原の戦いで、家康は晩年だけしか描かれておらず、家光は逆に晩年がほとんど描かれていない、というのが理由の一つだが、それだけではない。3人の主人公のうち、最も丁寧に心情を描かれていたのが秀忠だと思うからである。本作の秀忠は、関ヶ原に馬を急かすあまり血尿になり、挙げ句合戦に間に合わないという情けない登場であった。その後も偉大な父の重圧に耐え、妻の尻に敷かれ、2人の息子の不和に悩む姿が頼りなくも現実的で、そんな人物像と西田敏行さんというキャラクターがマッチして、非常に魅力的であった。西田敏行さんは、同じくジェームズ三木氏脚本の『八代将軍吉宗』でも主演を務めている。西田敏行さんとジェームズ三木氏の脚本というのは、親和性が高いのかもしれない。ちなみに、徳川家康を演じたのは津川雅彦さん。短気で偏屈だけど感情がすぐ顔に出てどこか憎めない爺さん、という印象。松村邦洋さんがやる津川雅彦さんのモノマネは今でも、このドラマである。それだけ、特徴的に演じていらっしゃったのだと思う。徳川家光を演じた二代目尾上辰之助(四代目尾上松緑)さんは、女装するなど奇行の目立つ役柄だったこともあり、視聴者として感情移入することがなかなか難しかった。

語りは水戸光圀役として中村梅雀さんが担当した。光圀は本作からすると後年の人物であるが、『八代将軍吉宗』で語りを担当した近松門左衛門と同様にキャラクターが確立しており、介さん覚さんと衝突したり、時にこっそり劇中の時代に登場したりと活躍していた。「さればでござる」という決め言葉も同じだが、これは中村梅雀さんの方が似合っていたと私は思う。

徳川幕府の尾張、紀伊、水戸の御三家の始まりを知ることができたり、秀忠の兄でありながら徳川家を継ぐことができなかった結城秀康とその一族を丁寧に描写したり、家康から冷遇された六男・忠輝についても多くの時間を使って描いていたりと、徳川家のこと、特に家康の子どもたち、孫たちのことがよく分かる作品となっている。ちなみに忠輝を演じたのは阪本浩之さんで、『八代将軍吉宗』で西田敏行さんが演じた吉宗の青年期を演じた俳優さんである。このように、脚本が同じ人なだけあって、『八代将軍吉宗』との共通点は多い。

他の登場人物で印象的だったのが、浅井三姉妹である。織田信長の妹・お市の方と浅井長政の子どもたちで、織田家にも豊臣家にも徳川家にも縁が深いので、大河に何度となく登場している姉妹だが、本作では、淀殿(茶々)が小川眞由美さん、常高院(初)が波乃久里子さん、お江が岩下志麻さんと、これ以上ないほど重厚な三姉妹だった。画面を通してすら白粉のにおいを感じて息苦しくなりそうなほどだった。『江〜姫たちの戦国〜』の宮沢りえさん、水川あさみさん、上野樹里さんと並べて見比べたいほどである。

あと、春日局の樹木希林さんも、大変な存在感であった。家光が唯一心を開く人物であり、母・お江と対立する役柄である。もちろん優しさ、強さを感じる人物ではあったのだが、同時に得体のしれなさ、恐ろしさも感じさせられた。怪演といって良いと思う。私は当時子どもだったので、樹木希林さんの演技力や評価はおろか、存在自体を知らなかったが、この作品で強く心に刻まれた。