2004年 新選組!

Amazon 『新選組! 後編 (NHK大河ドラマ・ストーリー)』
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この大河はいろいろと画期的な作品であった。全49話なのだが、近藤勇の人生のなかから重要な49日を取り上げ、1話で1日を描くという手法を取っている。オープニングの音楽に歌が入るという点や、ナレーションがないという点でも一線を画している。また、2006年の正月時代劇として『新選組!! 土方歳三 最期の一日』という、大河ドラマ初の続編が放送された。

この大河は、私が高3だった年の1月から放送された。私は中学生ぐらいから新選組がけっこう好きで、新選組を題材にした小説やマンガをいくつか読んでいたし、高2のときには京都で新選組が屯所にしていた八木邸にも行った。人も、できごとも、有名どころは知っていたので、誰が演じるのか、どんな風に描かれるのかと、楽しみにしていた。

近藤勇や土方歳三が、坂本龍馬や桂小五郎と旧知の仲だったという設定や、近藤がヒュースケンを助けるというエピソードなど、史実には残されていない部分について批判もあったようだ。しかしオリジナルキャラクターはほとんど登場しておらず、他の大河と比較してもそこまでめちゃくちゃな時代考証だとは思えない。批判があるということは、それだけ新選組が多くの人に愛されていて、その人の数だけ自分のなかの新選組像があるということなのではないかと思う。私はどう感じたかというと、例えば池田屋は、よく時代劇で描かれるような大階段のある建物ではなく、京都の町家らしいうなぎの寝床の造りで、細部まで再現されており、むしろ時代考証は非常にきっちりとされていたのではないかと思っている。百万都市であった江戸で近藤と龍馬が知り合うなんていうのはでき過ぎだろうとは思うけれど、絶対に友人ではありえなかったという証拠があるわけでもないので、そういう歴史の余白とも言える部分で自由に遊んでこそ、大河ドラマがドキュメンタリーではなく「ドラマ」である意味があると考えている。龍馬暗殺事件など、2人が友人であったからこその描き方がなされており、物語が進むに連れて必然性のある設定だと思わされたし、丁寧に作られていると好感が持てた。

そんななかで、私はさすがに沖田総司に対する美少年幻想は持っていなかったが、病弱で細面というイメージだったので、藤原竜也さんというキャスティングを初めて聞いたときはイメージと違いすぎて少し嫌だなと思ってしまった。演技力が賞賛されているのを何かで読んだことがあったので、さてどんなもんかと、お手並み拝見と、ちょっと斜に構えながら観ていた。始まってみると、無邪気に振る舞いながらも年相応に悩んだり迷ったりして、人間味溢れる表情豊かな沖田総司であった。病気が進行してくるとともに諦めや翳りを湛えるようになるところもリアルで、すっかり藤原竜也さんのファンになってしまった。

また、佐藤浩市さんが演じた芹沢鴨は、悪い人と分かっていながらもなぜか惹かれてしまう魅力があった。でたらめな強さと、放っておけない弱さを併せ持ち、男にも女にもめちゃくちゃモテるけどめちゃくちゃ嫌われる、という感じで、若い沖田がうっかりついていきたくなってしまうのも分かる。ちなみに私は、芹沢鴨の辞世として伝わっている「雪霜に ほどよく色の さきがけて 散りても後に 匂う梅が香」という歌が好きだ。自身を梅に例えて、死を覚悟したカッコイイ歌だと思う。梅が咲きかけるのと維新の魁となるというのがかけてあるのもオシャレ。実際は、上洛前の投獄中に死を覚悟して詠んだ歌なのだが、京で一緒に死んだ愛人の名前が梅というのも運命的だと思う。その梅を演じた鈴木京香さんも、妖艶で魅力的だった。

新選組というと、薩摩や長州のいわば敵も多く斬っているが、隊内の粛正も多く、物語の中盤から終盤にかけては毎回のように誰かが死んでしまうのだが、特に涙なしに観られなかったシーンを2つ紹介したい。1つめは、堺雅人さん演じる山南敬助が脱走を図った後、連れ戻されて切腹するシーン。堺さんはこの切腹シーンのために体を鍛えたらしい。作品によっていろいろな描かれ方をする山南の脱走だが、本作では試衛館時代からの仲間たちがなんとか助けようとするも組織の中でままならない様子が切なく描かれていた。2つめは、藤堂平助が御陵衛士として脱隊したのち、油小路でかつての仲間たちと死闘を繰り広げるシーン。こちらも、試衛館時代からの仲間は藤堂を殺さなくて済むように努めるが伝わらず、死を覚悟して咆哮を上げる藤堂を演じた二代目中村勘太郎(六代目中村勘九郎)さんの壮絶な表情が印象的であった。

本作唯一のオリジナルキャラクター・滝本捨助を演じたのは、中村獅童さん。「呼ばれてないのに現れるのが捨助でございますよ!」というのがお決まりの台詞で、物語中、至る所に出没しては近藤勇たちにつきまとい、視聴者目線でもちょっと鬱陶しく感じる人物。脚本の三谷幸喜氏は、この捨助にも最後に見せ場と死に場所を与えていて、作品と登場人物に対する愛情を感じる。

ところで、小説やマンガでは「新撰組」と表記されることが多いが、この作品は「新選組」である。「撰」の方が昔っぽいと感じるかもしれないが、近藤はじめ隊士たちはどちらもあまりこだわりなく使っていたらしい。公式な文書や印鑑では「新選組」となっていたことが近年明らかになってきたようだ。この2つの文字は少し意味が異なり、「撰」は詩や文を選ぶという意味なので、単純に選ぶという意味の「選」の方が、意味の上でもふさわしい。

大河ドラマは多くの場合、年末に総集編を放送するが、この作品は、その後に「どんとこい新選組!」なる座談会を放送していた。主要キャストが集まって印象的なシーンなどを語り合い、三谷幸喜氏も登場して、仲の良さが伺えた。青年たちの群像劇ということで、キャストも若い男性が多く、男子校的なノリもあったのだろう。土方歳三を演じた山本耕史さんが、自身の演技は二の次で、香取さんをどれだけ楽にできるかに心血を注いだというような発言を当時あちこちでしていた。電話番号をほとんど人に教えないことで有名な香取慎吾さんが山本耕史さんの熱意に負けて連絡先を教えたというのを聞いたことがある。今となっては解散してしまったSMAPだが、当時は何本もレギュラー番組があり、寝る間も惜しんで働いていたのだろうし、子どものときから芸能界にいて人間のいろいろな面を見てしまったから人付き合いが億劫になってしまったのかなと思うので、山本さんはそんな香取さんの心を溶かしたのだと思うと、ほっこりした気持ちになる。香取さん自身は山本さんのことを「うざい!」なんて言っているが。余談だが、この大河ドラマの出演者は今でも集まって忘年会をしているらしい。