この作品は吉川英治氏の『宮本武蔵』が原作。実際の宮本武蔵というよりは、小説を実写化したという印象で、架空の人物が多く登場する。また、大河ドラマでありがちな、歴史上有名な事件に主人公が関係したり、有名人と実は友達だったり、というような設定があまりない。次から次へと強いライバルが現れて、武蔵は苦戦しながらも倒して強くなっていくという少年漫画のようなストーリー展開で、大河ドラマを観ているというよりは、歴史を舞台にした漫画の実写版を観ているような印象であった。NHKテレビ放送開始50周年、大河ドラマ40周年を記念する作品であり、新しいことをたくさん盛り込んだ、制作陣の意欲作であったのだろう。
本作品の主役を務めたのが七代目市川新之助(十一代目市川海老蔵)さん。今でこそブログタレントのイメージも強く、親しみやすい印象があるが、当時は今よりも痩せていたのか、それとも目をカッと見開く役づくりをしていたのか分からないが、かなりギョロ目で、ボサボサ頭に笑顔のあまりない役で、今とはかなり印象が違う。そんな武蔵の少年時代は、NEWSの増田貴久さんが演じた。『毛利元就』でも、主人公のギラギラした少年期を、同じくジャニーズの森田剛さんが演じていたが、森田さんは特にジャニーズに興味のなかった私でも知っていたのに対し、この作品ではジャニーズということすらも知らずに観ていた。この大河が放送されていた2003年にNEWSは結成され、CDデビューしているのだが。
個人的にこの作品は、大河のなかではあまり好きではない部類に入るのだが、その原因として、登場人物が好きになれなかったということが挙げられる。特に、武蔵の幼なじみ、堤真一さん演じる本位田(ほんいでん)又八と、又八の許嫁で武蔵の恋人になる、米倉涼子さん演じるお通。又八はいいヤツなのだがいいかげんで危なっかしいし、お通は疫病神じゃないかと思うぐらいあちこちでトラブルに巻き込まれる。2人とも武蔵の足ばっかり引っ張っているように感じて、観ていてもどかしかった。人はいいけど困った事態を度々引き起こす親友や、トラブルに巻き込まれがちでいつも主人公に助けられるヒロインといった登場人物も、少年漫画あるあるという感じがする。
リンク
Wikipedia 武蔵 MUSASHI
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A6%E8%94%B5_MUSASHI
キャスト、スタッフや概要はこちら。
Bunkamura ムサシ
https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/18_musashi.html
同じく吉川英治氏の『宮本武蔵』を原作として井上ひさし氏が描き下ろし、故蜷川幸雄氏の代表作となったのが舞台版『ムサシ』。追悼公演ではなく蜷川氏が生前の公演を私も見に行ったのだが、藤原竜也さんの熱演に心打たれた。このお話はドラマよりも、舞台のほうが合っているかもしれない。
柳生観光協会公式サイト
この作品で武蔵の前に立ちはだかる柳生一族が暮らした「柳生の里」。奈良市内でありながら、アクセスは良いとはいえないのだが、数々の歴史的な建物があり、ぜひ一度行ってみたい場所である。